近年、運動器の徒手治療において「筋膜」という言葉がよく使われます。

筋膜リリースであったり、

筋膜はがしであったり・・

筋膜について少しお話しながらそのつながりを利用した「アナトミートレイン」の考え方を知ってもらえたらと思います。

 

 

筋膜とは

 

 

鶏肉を切ろうとすると表面の白い薄膜がまとわりつかないですか?

 

あれが筋膜です。

 

筋膜とは、筋肉を包む膜だけを指すのではなく、や臓器、骨、神経、血管などを包み、全身連続結合した組織の膜です。

 

英語では「ファシア(fascia)」と呼ばれているものを「筋膜」と訳したため誤解が起こりやすいですが、各部位を支え、保護する役割だけでなく、全身の構造をつなげて一体化させ、動きや機能を調整する重要な役割を果たしています。

 

また、筋膜には豊富な神経分布があり、身体の感覚と運動に深く関わっています。

  

具体的には、機械受容器と侵害受容と呼ばれるセンサーが多く分布しており、機械受容器は膜組織の変形を知覚することで主に「動かしている」という感覚や姿勢の状態を知覚し、侵害受容器は様々な痛み感覚や温度感覚を知覚します。

 

これによって特に重要な痛みの感覚と身体の位置感覚を伝達しています。

 

これは筋膜が単純に「組織の包む」だけの組織ではなく、情報の伝達や感覚を認識して脳に伝える役割も担っていることを示しています。

 

 

 

そして、筋膜の重要な役割に「柔軟性」「滑走性」があります。

 

柔軟性があることで身体が柔らかく伸び縮みし、滑走性があることで隣り合った組織がスムーズに動きます。

 

どちらに異常があっても身体の滑らかな動きを阻害したり痛みを出したりしますが、問題は筋膜が様々な原因で頻繁に硬くなったり、癒着を起こすことです。

これにより、痛みやコリなど運動器の問題が発生しやすくなるのです。

 

アナトミートレイン

 

 

アナトミートレインは、アメリカのトーマス・W・マイヤーズによって提唱された理論で、筋肉を包む薄い膜組織である「筋膜(Fascia)」が体全体でどのように連結されていくかを体系化したものです。

 

筋膜は筋肉を包むだけでなく、連続的に全身を列車のように繋いでおり、筋膜のつながりに沿って身体の動きや姿勢が保たれていると考えました。

 

これを列車になぞらえて「トレインライン」と呼び、アナトミートレインでは12本の主要なラインが設定されています。

これにより、体の一部の運動が連動して体全体に影響を与えるという考え方を運動学的に理論付けました。

 

アナトミートレインの理論を用いることで、局所的な痛みだけでなく、体全体のバランスや動きを見ながら施術を行うことが可能です。

 

例えば臨床では、腰の痛みが手の指先の影響を受けていたり、首の痛みが足の筋肉の問題であったり、問題の原因が離れた場所にあることが多々あります。

このように痛みのある箇所だけでなく、筋肉や筋膜のバランスがどのように体全体に影響を与えるかを把握して、関連するトレインラインを調整することで、原因を広い視点で捉え、効果的かつ根本的なアプローチが可能です。

 

鍼灸との融和

 

 

非常に興味深いことですが、アナトミートレインで考える「12のライン」には、東洋医学の「経絡」との共通点が多くあります。

 

経絡は、経穴(ツボ)の並びであり、気血が流れる道として体中を巡る線のようなものです。

 

経絡が「気」の流れに基づいて体をつないでいる一方、アナトミートレインは筋膜によって体の構造をつないでいると考えられます。

 

鍼灸では、経絡に沿って鍼やお灸を使い、気の滞りを解消して体の調子を整えますが、アナトミートレインのラインに沿って施術をすることで同じように全身の調節をすることができます。

 

このように、アナトミートレインと経絡には「全身のつながりの調和を守る」という共通した目的があると言えます。

 

当院での活用

 

筋膜には侵害受容器が分布しているので「筋膜リリース」と称して強い痛みを出すようなマッサージを行うのはナンセンスです。

 

触圧覚刺激などで皮膚の抵抗を取り除いてから目的の筋膜までたどり着くのが本来の方法であり、当院では触圧覚刺激やアナトミートレインを活用して筋膜に取り組むことで神経系にもアプローチします。

 

こういった手法で行う筋膜リリースや鍼灸による神経系への働きかけは痛みへの対処だけでなく、自律神経のバランスを整えて、リラクゼーション効果やストレスの軽減が期待できます。

 

筋膜と脳神経系は密接に関連しているため、筋膜の状態を正常にすることで体全体の調整やメンタルケアにもよい影響を及ぼすと考えています。

 

また、東洋医学における経絡とアナトミートレインなどの機能解剖学を融合させることで「ツボとは何なのか?」と考察することは近年の重要な研究テーマであり、実際にこれらを交えた施術手法を、長年森ノ宮手技療法研究会において専門家に伝えてきました。

 

巷によく言われる「筋膜リリース」とは違う、より深い考え方はきっとあなたのお悩みの解決に役立つと考えています。

 

 

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